アレルギーについて
眼科の病気に限らず、アレルギー疾患をもつ患者数は年々増加傾向にあります。特に花粉症の患者さんは5人に1人ともいわれており、非常に身近な病気でもあります。
結膜アレルギーは即時型アレルギー反応で引き起こされる症状です。眼の表面に飛入した抗原が結膜に存在するマスト細胞とIgEを介して結合すると、マスト細胞が活性化されてかゆみや結膜の充血を引き起こすヒスタミンなどの物質を細胞外に放出します。
これと同時に好酸球などの炎症細胞が結膜組織内へ浸潤してきてアレルギー炎症が形成されます。
炎症が遷延化・重症化するとまぶたの裏側(瞼結膜)に増殖性変化が見られるようになり角膜上皮が障害されることがあります。
結膜アレルギーは抗原の種類により季節性と通年性に大別されます。スギ・ヒノキ(春)、ブタクサ(秋)などの花粉は季節性抗原の代表で、通年性のものはダニ、ハウスダスト、真菌などの常在抗原がその抗原となります。
これらの通年性抗原の中でもダニは梅雨時期の高温多湿の条件下で繁殖する傾向があることから、他の時期と比べて症状が悪化しやすく季節性的な病態を示す傾向もあります。
結膜アレルギーの診断には、結膜表面や結膜分泌物中に好酸球の存在を確認することで初めて確定診断が付きますが、多くの場合には「かゆみ」の自覚症状と結膜の炎症所見から診断されます。
季節性アレルギーの場合には毎年同じ時期に症状が認められますので診断は比較的容易です。
通年性の場合で1年のなかで症状の増悪寛解を繰り返す場合には、血清中の特異的IgE抗体を測定して抗原を同定することは治療を進めるうえでも重要です。
結膜アレルギーの種類には花粉症に代表されるアレルギー性結膜炎から角膜の上皮障害を伴うことがあるより重症な春季カタルやアトピー性角結膜炎などがあります。
アレルギー性結膜炎の自覚症状は掻痒感が特徴的で、ほかに眼脂、異物感、涙眼(流涙)、まぶしさ(羞明)などを訴える場合もあります。瞼結膜・球結膜の充血・浮腫がその特徴です。
炎症が増強して遷延化すると、瞼結膜に乳頭増殖が形成されるようになります。これは炎症細胞の「たまり場」みたいなものなので、角膜の上皮障害を合併しやすくなります。角膜上皮が障害されると異物感、眼痛、流涙、さらには視力低下などの症状がでてきて、日常生活にも支障を来すこともあります。
一般的に、アレルギー炎症は抗原に対する過敏症です。
その治療法には、抗原とできる限り接触しないことでアレルギー炎症の発症を抑える予防法と、発症したアレルギー炎症を治療する薬物療法に分けられます。
スギに代表される花粉の飛散時期には眼鏡装用などで眼表面に飛入する花粉量を減少させたり、人工涙液点眼で涙液中の抗原を洗い流すことも重要です。 また、ダニなどの常在抗原に対しては定期的な清掃ならびに繁殖しにくい環境づくりが重要です。
薬物療法では、アレルギー炎症に関与するマスト細胞や好酸球・好塩基球の働きを抑制する抗アレルギー点眼薬、掻痒感を抑える抗ヒスタミン受容体点眼薬が第一選択となります。これで不十分な場合には、ステロイド点眼薬や免疫抑制剤の点眼薬を併用することがあります。特にステロイドには緑内障や角膜感染症などを引き起こす副作用があるため、眼科での定期的診察が必要です。