スティーブンスジョンソン症候群
スティーブンスジョンソン症候群とは
スティーブンスジョンソン症候群は、粘膜皮膚眼症候群ともいわれ、急激に発症する皮膚・粘膜の炎症性疾患です。多くの場合、 発症には薬剤の投与が関係していると考えられ、原因薬剤としては、非ステロイド系抗炎症剤、サルファ剤、抗生剤などが多いとされていますが、 どんな薬でも発症しうると考えられています。また、ウイルス感染を契機に発症することもあります。
発症機序の詳細は不明ですが、薬剤や病原体に対する免疫反応の異常を契機に発症する自己免疫疾患と考えられています。 中毒性表皮壊死(Toxic epidermal necrosis; TEN)とスティーブンスジョンソン症候群とは、皮膚所見などは異なるものの、 病態的には共通のものと考えられており、眼科的所見も共通しているので、一括して論じられることが多いです。
スティーブンスジョンソン症候群の症状
全身的には、上気道感染様の発熱、咽頭炎に引き続いて、顔面、四肢を中心に紅斑・浮腫が出現し、水疱形成をきたします。 口腔粘膜、肛門などにもびらんを生じ、気管支、肺が冒されたり、敗血症を合併すると命に関わる場合もあります。
眼局所では、急性期には結膜炎、結膜上皮びらん、角膜上皮障害、虹彩炎をきたします。この時期には、全身的には、 熱傷に準じた治療と感染のケアが必要です。眼科的には、混合感染に対する点眼治療と、ステロイド点眼を中心とした消炎が重要となります。 本疾患は、基本的には自然治癒傾向があり、2−4週間のうちに回復期(慢性期)にいたり、全身状態が安定したこの時期に初めて眼科を受診することも多いです。
スティーブンスジョンソン症候群の治療
眼科的合併症の程度は、涙液機能と輪部機能がどの程度保たれるかによって大きく左右されます。 軽症例では、軽度の涙液分泌低下や点状表層角膜症を認めるのみのことが多く、人工涙液やヒアルロン酸製剤の投与、涙点プラグなどの処置が行われます。
視機能が保たれているものでも、眼瞼や睫毛の異常が残存し、その管理を長期にわたって行うことが必要となる例も多くあります。 重症例では、輪部機能不全、涙液分泌低下、睫毛乱生や眼瞼の角化・瘢痕化、マイボーム腺機能不全による眼表面の炎症や障害が繰り返し生じます。
その結果、結膜侵入、新生血管侵入、眼表面上皮の角化を伴う瘢痕性角結膜症の状態となり、角膜実質の混濁や眼表面の皮膚化をきたし、 時に両眼とも失明状態となる事も少なくありません。
この時期に至ると、視機能の回復のためには、羊膜移植、輪部移植、 培養上皮シート移植などの眼表面再生術が必要となりますが、涙液分泌が全くなく角膜表面が皮膚のように角化したり、睫毛乱生や眼瞼の異常を伴う例では治療が困難です。