「ネットワークメタアナリシス:Comparative Effectiveness Researchのためのエビデンス統合の方法」
統計数理研究所 野間久史先生
■Network Meta-Analysis (NMA) について
- 複数の治療法のComparative Effectivenessを評価するために新たに開発されたエビデンス統合のための研究方法。
- 2種類の治療の対比較に限らず、利用可能な複数(3種類以上)の治療法を、過去の臨床試験から得られたエビデンスを統合し、系統的に比較するためのメタアナリシス。
→個々の臨床試験では、個々の臨床試験ではほとんどが2つの治療の対比較で、多くても3-5群の比較のみ。
→NMAを用いることで、直接比較のエビデンスがないパスでも、ネットワーク上の間接的な連結のあるパスの情報を活用できる。
■NMAの実際
- 1991-2007年に実施された12種類の新世代抗うつ薬のいずれかを比較したランダム化臨床試験 (117試験, 25298人)の結果を統合解析した研究の概要説明
→NMAによって12種類の抗うつ薬の有効性・許容性を系統的に評価された。
- Network Plotの提示が必要となる
→それぞれの治療群・対比較のパスが、全体の結果にどの程度、寄与するかを理解するために有用なグラフ
- ベイズ統計学など、流派により計算技法が異なる
- 利点として、
- ①精度, 検出力の向上
- ②直接比較のエビデンスがなくても比較可能
- ③Comparative Effectivenessの評価が可能
- 上記利点がある反面、ネットワーク上の比較の妥当性の判断が重要となる。
Cf. Consistency : ネットワーク上のすべてのパスにおいて、治療間のEffect Sizeの差が一致(consistent)すること。
*NMAの解析モデルは、ネットワーク上のすべてのパスにConsistencyを仮定しているので、1つでもそれが崩れると、妥当性が成り立たない。
*有意になったTriangle Loopは、Inconsistencyが疑われるので、バイアスを生じさせる要因がないかどうかを詳細に検討する必要がある。
■まとめ
- 近年のComparative Effectiveness Researchの進行からも、NMAはシステマティックレビューのスタンダードな方法の一つとして、今後、ますます普及していくことが予想される。
- 方法論そのもののメリットは大きいが、強い理論的過程に依存する方法であり、さまざまなバイアスが含まれるリスクがある。
■質疑応答
- 組み入れ基準とアウトカムの設定が違う場合、どの程度統一されたアウトカムを組み入れるのか。(島武謳カ)
→ ある程度の異質性が認められているのが一般的で、様々な手法がある。
- どのような解析ソフトを使って解析するか(山口先生)
→ 手法によって異なるが、ベイズ流ではない手法を用いているstataの’net work’というモジュールを用いたり、ベイズ流を用いたRが出しているモジュールを用いることもある。(長谷川勉強不足のため、ソフト名前は異なるかもしれません。すみません。)
- 今回、NMAの事例として紹介していた論文では、有効性に関するアウトカムは、薬剤に対して効果が有る/無い(=0, 1)の検定を統合していたが、NMAの解析におけるアウトカムの尺度として、順序変数や連続変数を扱うことはできるか?(西迫さん)
→ 可能。今回紹介した論文では、効果量(連続変数)をある閾値で便宜的にバイナリーとしているが、これは、NMAがカテゴリ変数のみ扱うわけではなく、実験の特性などを考慮しこのようにしていた。中央値やハザード比などもアウトカムとして取り扱うことは可能。解析自体はパッケージで解析することもできる。
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