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ドーナッツセミナー実施記録
・2021.11.11 第162回ドーナッツセミナー実施記録
東歯大市川で学んだこと、そこからの挑戦
慶應義塾大学医学部特任助教・理化学研究所メタボローム客員研究員 小川護先生

■基礎研究に関して
  • 理化学研究所での実際の研究生活について
  • 東京歯科大学で知り合った先生方との繋がりについて
  • 基礎、臨床研究の種類:@表現型主導A新しいものを生み出すBノンバイアスC仮説主導


■脂質について
  • 脂質の三大機能:@細胞膜Aエネルギー源Bシグナル伝達物質
    →遺伝子にコードされておらず、増幅ができない。生体に微量しか存在していないため、 感度な質量分析装置が必要。
  • 脂質代謝物は炎症を正負に制御する
     →脂質代謝酵素(COX:シクロオキシゲナーゼ,LOX:リポオキシゲナーゼ,CYP:チトクロームP450)を介して、炎症促進物質(ロイコトリエン、プロスタグランジン)や抗炎症物質(リポキシン、リゾルビン、プロテクチン)に代謝される。
  • 眼球には脂質が多く含まれている。


■脂質代謝酵素12/15-LOXについて
  • 12/15-LOXは全身の上皮細胞・好酸球・マクロファージで発現されているが、眼球においては角膜創傷治癒に関わっており、12/15-LOX-/-マウスでは、創傷治癒が遅延する。
  • 生体内における好酸球の役割:好酸球は脂質を産生して、腹膜炎を収束させている。
  • 角膜創傷治癒にも特に好酸球が関与し、12/15-LOXを高発現する好酸球が積極的に角膜の創部に集積し、脂質代謝物を産生する。
  • 好酸球は12/15-LOX経路を介して、角膜創傷治癒を促進する。
  • 眼表面における12/15-LOX由来の主要な代謝物である17-HDoHEは角膜創傷治癒過程において有効である。
    →将来的に、ドライアイの治療薬となりうる。


■質疑応答
  • 好酸球の脂質代謝の反応は具体的に眼表面のどの部位で起こるか(佐竹先生)
    → Ocular surface全体で起こっていると考えられる。
  • 12/15 -LOXが幹細胞に作用することで創傷治癒につながるが、12/15 LOXの点眼治療はSJSや化学外傷などの幹細胞疲弊症にも、効果はあるか(山口先生)
    →12/15-LOXは、幹細胞再生と抗炎症の2つの作用があるので、効果が期待できると考えられる。
  • SJSなどはマイボーム腺が障害されるが、マイボーム腺から分泌される脂質と12/15-LOXの関係性はあるか(山口先生)
    →マイボーム腺から分泌される脂質は長鎖のため、小川先生の研究内容からは外れるが、酵素レベルでの関連は考えられる。

 

 
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