「東歯大市川で学んだこと、そこからの挑戦」
慶應義塾大学医学部特任助教・理化学研究所メタボローム客員研究員 小川護先生
■基礎研究に関して
- 理化学研究所での実際の研究生活について
- 東京歯科大学で知り合った先生方との繋がりについて
- 基礎、臨床研究の種類:@表現型主導A新しいものを生み出すBノンバイアスC仮説主導
■脂質について
- 脂質の三大機能:@細胞膜Aエネルギー源Bシグナル伝達物質
→遺伝子にコードされておらず、増幅ができない。生体に微量しか存在していないため、
感度な質量分析装置が必要。
- 脂質代謝物は炎症を正負に制御する
→脂質代謝酵素(COX:シクロオキシゲナーゼ,LOX:リポオキシゲナーゼ,CYP:チトクロームP450)を介して、炎症促進物質(ロイコトリエン、プロスタグランジン)や抗炎症物質(リポキシン、リゾルビン、プロテクチン)に代謝される。
- 眼球には脂質が多く含まれている。
■脂質代謝酵素12/15-LOXについて
- 12/15-LOXは全身の上皮細胞・好酸球・マクロファージで発現されているが、眼球においては角膜創傷治癒に関わっており、12/15-LOX-/-マウスでは、創傷治癒が遅延する。
- 生体内における好酸球の役割:好酸球は脂質を産生して、腹膜炎を収束させている。
- 角膜創傷治癒にも特に好酸球が関与し、12/15-LOXを高発現する好酸球が積極的に角膜の創部に集積し、脂質代謝物を産生する。
- 好酸球は12/15-LOX経路を介して、角膜創傷治癒を促進する。
- 眼表面における12/15-LOX由来の主要な代謝物である17-HDoHEは角膜創傷治癒過程において有効である。
→将来的に、ドライアイの治療薬となりうる。
■質疑応答
- 好酸球の脂質代謝の反応は具体的に眼表面のどの部位で起こるか(佐竹先生)
→ Ocular surface全体で起こっていると考えられる。
- 12/15 -LOXが幹細胞に作用することで創傷治癒につながるが、12/15 LOXの点眼治療はSJSや化学外傷などの幹細胞疲弊症にも、効果はあるか(山口先生)
→12/15-LOXは、幹細胞再生と抗炎症の2つの作用があるので、効果が期待できると考えられる。
- SJSなどはマイボーム腺が障害されるが、マイボーム腺から分泌される脂質と12/15-LOXの関係性はあるか(山口先生)
→マイボーム腺から分泌される脂質は長鎖のため、小川先生の研究内容からは外れるが、酵素レベルでの関連は考えられる。
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