「網膜ジストロフィ診断の基本」
東京医療センター眼科 臨床研究センター・視覚研究部長 角田和繁先生
(1)遺伝性網膜疾患 患者への対応
(2)遺伝性網膜疾患の分類と診断
(3)新しい視覚障害認定基準へ
(1)患者は何を求めているか
正確な診断名、予後予測、遺伝の可能性など
診断のステップ
A 正確な問診
・遺伝性か、後天性か
所見が似ている非遺伝性のものも多く存在する(陳旧性のぶどう膜炎、感染症、血流障害など)
通常は両眼に発症し、ゆっくりと進行する
中心窩のみ保たれるタイプもあり中年以降に発症に気づくこともある
子供の頃の夜盲、羞明、眼振など
全身合併症 アッシャー症候群
特定の治療薬 クロロキン タモキシフェン 抗癌剤 向精神薬
正確な家系図の作成:「自覚症状のない罹患者」の存在、「自称網膜ジストロフィ患者」の存在に留意
B 自覚的検査
視野はゴールドマンがよい
C @網膜イメージング:OCT 眼底自発蛍光
A電気生理学的検査:ERG EOG
B遺伝学的検査
- OCT
黄斑 層構造をみる ELM、EZ(特に視力に重要)、IZ、RPE Foveal bulge
- 自発蛍光
FAに代わる検査 フォトルミネッセンス現象
RPEが元気かどうかがわかる
ダメージに伴い信号は増強 最終的には消失
過蛍光:RPE編成の初期〜中期
低蛍光〜消失:RPEの委縮期
輪状、弓状の過蛍光:病変部の境界
自発蛍光の特徴
非侵襲、通常の眼底検査ではわからない異常が検出可能
病気の進行を正確に把握できる
- ERG
全視野 ERG
多局所 ERG
レチバル 簡易手持ち型のものもある
遺伝学的検査
約300の遺伝子
現在保険診療で遺伝子検査はできない
D ロービジョンケア
スマートフォンやタブレット、AIスピーカーなどのIoT機器が主役になりつつある
ロービジョンケアネットワークというものがあり、相談の窓口となっている
(2)黄斑ジストロフィ
両眼性、進行性の機能障害を網膜黄斑部に来す疾患のうち、遺伝学的要因によるものの総称
特異的な所見から診断が可能なもの
実際には分類することができない遺伝学的な原因が不明な症例も多い
- スターガルト病 ABCA4
比較的頻度多い 常劣遺伝
若年発症 黄斑周囲に散在するFleck(経過中に出現し増加することも退縮することもある)
- ベスト病 BEST1 卵黄様黄斑ジストロフィ
常優遺伝
卵黄期→炒り卵期→偽前房蓄膿期→委縮期
- オカルト黄斑ジストロフィ(三宅病) RP1L1
眼底に異常の見られない優性遺伝形式のジストロフィ
自発蛍光もERGも正常 多局所ERGで中央のみ異常
高解像度のOCTで層構造の破綻あり EZ不明瞭化
(3)H30年7月から
視力障害はいい方の視力で判定する
自動視野計での判定も可能となった
求心性視野障害の判定基準が緩和された
中心視野障害の認定基準5級が加わった
<質疑応答>
- 家族歴がなかったり、網膜所見にも幅があったりするが遺伝子検査をすると100%確定しますか?(松村)
→だいたい50%程度しか確定しない。遺伝子検査は万能ではない。
表現型と遺伝子変異の対応の解明も進んできているため、専門家が見ると臨床的に診断がつくことも多い一方で、遺伝子検査を行ってもわからない症例も多いという現状。
- 患者さんは進行の速度を気にすることが多いと思うが、どれくらい予測できるのか?(島崎)
→遺伝子フェノタイプと病気の重症度がはっきり関連しているものもあるが、多くはない。
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