常識的に、通常の視力検査は片眼を遮閉して非遮閉眼の視力(言わば片眼遮閉視力)を測定している。片眼遮閉すると両眼開放下に比べて有意に瞳孔径は散大し、それにより焦点深度の低下、収差の増大が生じ、結果的に自覚屈折値の増大(近視化)、視力値の低下が懸念される。日常視力を評価するためには自然瞳孔下で視力検査を行うことが理想であり、片眼遮閉を行わない、両眼開放検査の考え方が必要である。近年我々は新しいコンセプトの両眼開放視力検査及び弱視訓練の効果について報告した。本法は偏光レンズを通した眼のみ視標(ランドルト環)が見えるように加工したタブレット型視機能検査訓練器(Occlu-pad®)を用いる両眼開放(測定眼に円偏光レンズ装用及び他眼は非遮閉)視力検査法である。両眼開放視力検査における自覚的屈折値は、従来の片眼遮閉下の自覚的屈折値に比べて有意に低値となる。また弱視訓練においても、健眼遮閉を行う従来の弱視訓練(遮閉法)に比べて、両眼開放下の弱視訓練は良好な弱視治療成績が報告されている。
本講演では両眼視矯正(両眼視を基本とした視機能検査・訓練の考え方)の視点から、斜視・弱視の視機能検査・視能訓練について、両眼視機能に関連性の深い3D映像、ビジョントレーニング(プロ野球)など、演者の取り組みの一の紹介と共に両眼視について改めて考えてみたい。