人工硝子体の開発と未来の硝子体手術
筑波大学眼科 岡本 史樹 先生
硝子体術後の入院患者さんは、
- ずっとうつぶせ
- 安静
- 術後視力なし
- 退院まで眼底みえない
→治っているかわからないし、うつ伏せで患者さんは苦痛を強いられる
剥離のタンポナーデ物質はガスでなくてもいいのでは?
そこで網膜裂孔のシーリングとしてFocal Sealに着目→接着はOK、毒性も問題ない
ウサギに剥離を作った実験を行った。Focal seal群は術後1カ月で裂孔の拡大は認めたが、術後3ヶ月でも復位を維持。対象群のairタンポナーデでは全剥離となっていた。
Focal sealの限界点:ゲルの膨張による裂孔の拡大、網膜の雛壁がある。実際の医療には使えない
→膨張しないゲルが必要
人工硝子体に求められる条件:
透明性、屈折率、弾性、注入のしやすさ、非膨張性 など
網目構造であるハイドロゲルは有望。欠点は膨張性。しかし、生体内では水分を吸収し続ける“swell gels”であり、 マイラゲルの失敗例あり
人工硝子体は作れないのか?
2014年に東大のグループが世界初の非膨張性ハイドロゲルが開発された。
→ウサギで硝子体手術をした。
透明性はよいが、消しゴムのように固かった。炎症が強かった
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新しいデザインのゲルが必要。
弾性が人の硝子体よりやや硬め、数カ月は安定しその後分解、炎症惹起物質の除去、すぐにゲル化するなどの条件で設計。
膨張はハイドロゲルの濃度が高いと起こる。毒性は未反応の官能基によって起きる。
濃度が低いとゲル化に時間がかかる。これらの問題を解消したゲルを作製。
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☆新たな設計によるハイドロゲル
2種類の臨界クラスターゲルを混ぜるシステムを開発 膨潤圧は2.2mmHg
ウサギの実験では透明性の維持、眼圧、網膜機能もクリアした
剥離は治せる? 410日後も再発せず。Air tamponade群は全剥離
新しいハイドロゲルは体積維持力、吸着力があり、これが剥離を抑える。
ゲルの眼科領域への応用:
レクトミーのブレブ維持
涙道チュービングの代替
裂孔性眼外傷のパッチ
人工水晶体
移植時の全貌維持
AphakiaのDSAEK
など
夢があります!!