患者さんから学ぶ、患者さんのための緑内障診療 JR総合病院 眼科部長 山上淳吉先生
緑内障に関して、基本的な事項と気を付けるべき事項についてのお話でした。
☆配合薬に関して
・第一選択ではないので単剤で効果不十分の時に。副作用にも注意する。
・PG+CAI配合薬とCAI+PG配合薬の効果に左右差はないが前者が推奨される。
☆高眼圧をみたら、眼圧下降よりも、まず疾患を推測することが重要!
・高眼圧の症例では時に詳細な前眼部検査(隅角検査)が重要になる。
(LI後に眼圧が下がってもPASがあれば後ほど眼圧上昇しそうと予測できる)
・繰り返す高眼圧+霧視や、ステロイドoff後に眼圧上昇する症例ではSGを考える。
(治療抵抗性でLectomyを勧められていたがステロイド点眼で眼圧下降した例も)
・高眼圧だけで何も他に所見がないなら角膜厚を測る。
(眼底正常の高眼圧では過剰な治療を防げるし、POAGでは過小な治療を防げる)
☆緑内障にみえてそうでないケースもある。
・眼底所見や視野障害が陳旧性の(血管病変などの)変化をとらえていることがある。
・視神経障害によりDisc変化を来すこともあり、RAPDなど左右差をみることが重要
・バイアグラによる虚血性視神経症によって視野欠損を来すような例もある。
☆OCTのみで緑内障の診断をすることはできない。
・OCTは感度90%特異度95%で、単純計算すると診断された人の半分は正常者!
・眼圧・眼底所見・OCT・視野検査のいずれも正確にみえて曖昧…総合的に判断を。
☆緑内障患者はいずれ失明するとの不安感がある。
・予測を示すこと、眼圧変動で一喜一憂しないこと、適切な治療で失明しないことを伝える。
白内障手術周術期の留意点-炎症予防・感染予防
東京医療センター眼科 診療部 眼科医長 野田徹先生
☆NSAIDs点眼の重要性
近年、白内障手術が低侵襲になり、IOLも進化した一方、患者さんの手術に対する期待度・要求度が非常に高い時代になった。それに伴いECCEの時代では問題になりにくかったCMEなどもより目立つようになった。そんな中で周術期の炎症対策、特にNSAIDs点眼の選択がより重要となっている。
術3日前よりNSAIDsを投与した群と、前日からの投与群とを比較すると、前者において、いずれも有意差をもって術中の瞳孔径が大きく、不快指数が低く、術後の前房内炎症やCMEの出現率が低く、最終矯正視力も良好であった。Placeboとの比較試験でも同様の結果が出ている。
ネバナック(ネパフェナク)は特に眼内移行性が高く、術前日あるいはそれ以前から投与を行うことで上記の効果が期待できる(東京医療センターでは白内障術前の全例で投与している)。
☆内眼手術の感染対策のポイント
白内障術後の眼内炎は術式の変遷により頻度が激減したが未だにしばしばみられる合併症である。そこで、安全な手術環境を実現するために以下の要件を満たすべきである(東京医療センターでは以下の方法によって過去25年間眼内炎の発症を起こしていない)。
・抗菌薬:培養結果などを参考にして適切なものを選択する。
(点眼では驚異的に高濃度の抗菌薬をDeliverでき、MICは関係ないとも言われているが…)
・消毒:2重翻転してfornixまで洗うことでムチンの部分まで洗い流す。
・ドレーピング:マイボーム腺の開口部を上に向けるくらいに外反する。
・テガダーム:マイボーム腺の開口部をしっかりと覆うようにする。
(どんなに消毒しても20分ほどでマイボーム腺開口部からは細菌がでてくる)
・頭位:切開創が眼瞼にあたらないように結膜の露出面積を調節する。
・吸引付き開瞼器:眼瞼縁に触れた水が眼内へ逆流することが感染のリスクに。水を貯めてはいけない。
・手術術式:術翌日に眼帯を取るまで確実に前房水が眼外へ漏れないようにしっかり閉鎖を。
(強膜切開に比べ角膜切開では眼内炎発症率が3倍と報告されている)
(感染のリスクだけでなく、低眼圧になれば圧格差で前房出血を惹起してしまう)
・眼帯:開閉眼による水漏れの可能性があるため確実に眼を圧迫させる。
(術後早期に抗菌薬を点眼させるなら別だが。)
(米国では術後診察するため、翌朝までの眼帯はしない方向。翌朝失明していたら訴訟で負ける)
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