視神経炎の診断について
視力検査や視野検査など様々な検査があるが、最も大事な検査は中心限界フリッカー値(以下、CFF)と対光反射である。
特に、CFFは何よりも鋭敏であり、治療を行うことによって、まずは視力が回復し、その後にCFFが回復してくるという、視力とCFFの値の解離が認められる。さらに、発症ごく初期には視力に先立ってCFFが低下することがわかっている。
CFFの意義
- CFFが低下するという事は、視神経炎に特有の所見である。
- VA-CFFの解離は、回復過程にもみられ、中尾先生はCFF値が35Hzを超えるまで治療を続け、治療の程度や指標として有用であるだけでなく、早期診断にも役立つ。
対光反射の意義
- 簡易な他覚的検査であり、詐病などの除外にも有用である。
画像検査の意義
- 従来の方法では、T1強調(炎症・脱随は低信号)と、T2強調画像(炎症・脱随は高信号)に撮影されるため、周囲組織との判断が難しい。STIR法(脂肪抑制)で撮影することで、周囲組織とのコントラストをつけて判断することが可能であり、画像検査で炎症所見を認めなければ、レーベル視神経症や中毒性視神経症などの疾患が挙げられる。また、MRIでは、coronalでの撮影も大事で、この手法では、1枚の画像で左右の視神経の輝度の比較ができるため、診断が容易である。
視神経炎の特徴について
視神経炎の分類
- 特発性視神経炎:1度だけの発症であり、原因は不明だが、virus感染の関与?(65%)
- 多発性硬化症(以下、MS)に合併した視神経炎:再発を繰り返す(25%)
- 視神経脊髄炎(以下、NMO)(Devic病):(10%)
NMOとMSは欧米と違う部分もあるが、MSは細胞性免疫が関与しており、再発・寛解を繰り返す疾患であり、インターフェロン療法(以下、IFN-β)が有効である。その一方で、NMOに合併する視神経症は液性免疫が関与しており、再発を繰り返し、重症で予後不良であり、IFN-βが無効であるどころか、悪化する事もある。そして、MSの部分疾患として、NMOを含むところがあり、それに合併した視神経炎は抗アクアポリン4抗体が陽性のことがある。
抗アクアポリン4抗体陽性例は、近畿大学の統計では、10%程度認められて、圧倒的に女性に多い事がわかっている。
抗アクアポリン4抗体陽性視神経炎の視野
頻度としては、中心暗点が75%と頻度は多いが、両耳側半盲(視交叉炎)や非協調性同名半盲(視索炎)のように他の視神経炎では認められない視野欠損を認める。
視神経炎の治療について
特発性視神経炎、MS合併視神経炎
- ステロイドパルス療法(ソルメドロール1000mg×3日間)
- 必要に応じて、プレドニゾロン30mgから内服
- 特発性視神経炎は70%ぐらいで無治療でも視力は回復することもあるが、CFFは回復しないことがある。
- MSの寛解期はIFN-βや免疫抑制剤などの投与が再燃予防に有効である。
抗アクアポリン4抗体陽性視神経炎
→軸索変性・空洞化・細小血管補体沈着・壊死などが比較的早くより見られる再発を繰り返すと、必ず前回の治療後の視力よりは回復しない。
- 血液浄化療法(単純血漿交換、二重濾過血漿交換療法、免疫吸着法)
- 全身状態不良例には免疫グロブリン点滴やリツキシマブ点滴
- 寛解期には、タクロリムスなどの免疫抑制剤の投与が大事である。
血液浄化療法の適応・ポイント
- 活動性炎症はあるか? →T1強調脂肪抑制造影法で判断する。
- 期待回復視機能は? →前回治療後の視力よりは良くはならない。
- 全身状態は可能か?
以上の3点がクリアできなければ、血液浄化療法は適応ない。