1.ムチンの基本的構造
ムチン |
アポムチンとよばれるコア蛋白に無数の糖鎖が結合している高分子糖蛋白 |
特徴 |
@Oグリコシド結合で糖蛋白と糖鎖が結合
Aコア蛋白にタンデム反復(セリン、スレオニンが豊富)をもつ
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ムチンはマイナスに荷電している(糖鎖末端にシアル酸が存在するため)。
→病原体が上皮に接着し、組織に侵入することを防ぐ。
上皮細胞同士互いにくっつかないようにする(anti-adhesion)。
ムチン(mucin)は、MUCと表記され、発見された順番で番号がつけられている。
MUC1は最初にクローニングされ、解析研究が行われたヒトのムチンであり、現在までにMUC1からMUC20まで報告されている。
分類
・分泌型ムチン:杯細胞やムチン分泌腺細胞から分泌
@ゲル形成ムチン(MUC2,5AC,5B,6,19)
A可溶性ムチン(MUC7,9)
・膜型ムチン:膜貫通ドメインをもつ(MUC1,3A,3B,4,12,13,15,16,17,20)
眼表面に発現しているムチン
涙腺 MUC7(分泌型 可溶性)
結膜杯細胞 MUC5AC(分泌型 ゲル形成):眼表面において最も発現が多い。
結膜上皮細胞 MUC1,4,16(膜型)
角膜上皮細胞 MUC1,16,(4)(膜型)
※MUC4は周辺部角膜には存在するが中央部では非常に少ない。
角結膜上皮細胞の表面にはmicroplicaeとよばれるヒダが存在し、その先端に膜型ムチンが多数発現し糖衣を形成している。
この膜型ムチンにより涙液が眼表面に保持され、病原体が眼表面に侵入することを防いでいると考えられている。
2.眼表面でのムチン発現の変化
ドライアイ患者では眼表面におけるムチン発現が減少するとされている。
シェーグレン症候群においてMUC5ACの発現が涙腺、結膜上皮において低下している。
CL装用においても刺激症状がありムチンが増加すると考えられたが、長期CL装用者(5年以上)とcontrolの比較検討では有意差はなかった。
血清→MUC1,4,16↑
レチノイン酸(ビタミンA)→MUC4,16↑
デキサメサゾン→MUC1↑
TNF-α、IFN-γ→MUC1↑
口腔粘膜におけるムチンの発現
分泌型優位:MUC5B,7が多い。
膜型ムチンmRNAの発現はほとんどみられなかったが、培養上皮シートでは角膜上皮と同じMUC1,4,16mRNAの発現がみられた。
培養過程において何らかの因子が増加させた?口腔粘膜内の環境が抑制していた?
3.眼表面でのムチン発現の変化
・涙液の保持
・眼表面を潤滑にする
・スムーズな球面を形成し、良好な視力を獲得
・眼表面のバリア機能
・病原体やデブリスを捕獲し取り除く
ドライアイ
ムチンは陰性に荷電しており互いに反発しあうため分泌型ムチンが涙液全体に広がる
ムチンは親水性であり、涙液が正常に保持される
ムチンが少なくなると涙液の保持ができなくなり、ドライスポットが形成され、この部分がBUT短縮部位になると考えられている
涙液中におけるムチン
水層中には分泌型ムチンが多数浮遊しており、眼表面を潤滑にし、病原体やデブリスをとりもちのようにくっついて排出する働きをおこなっている。
涙液を採取し涙液中のムチンを調べると、分泌型だけでなく膜型ムチンも認められる。
膜型ムチンにはcleavage siteとよばれるコア蛋白が切れる部分が存在し、そこで切断された膜型ムチンが涙液中に存在する。
ムチンの糖鎖による感染防御
O結合を切って糖鎖を切断してしまうとブドウ球菌↑
ムチンは物理的な取り込み以外にも感染に対する防御能を持つと考えられる。 |