■ 多焦点IOLの経緯
回折型→屈折型→新世代
年から新世代多焦点IOLの開発
■ 屈折型多焦点IOL
- 光学部前面に遠用、近用ゾーンを設け、入射光の屈折を利用する原理。
- 5ゾーンの多焦点機構を有するARRAY (R)はPMMA製PA154N、シリコーン製SA40Nとも良好な実績。
- 近方視力が瞳孔径に依存する。
- 構造上ハロー、グレアを自覚しやすい。
■ 回折型多焦点IOL
- 光学部に階段状の段差を有する回折現象により入射光が遠用、近用に分配され 2ヶ所に焦点が形成される原理。
- 近方視が瞳孔径に依存しない。
- 入射光の41%ずつが遠用、近用に分配され、残り18%が回折により失われるため、コントラスト感度低下、遠方視力が不十分な可能性。
■ 新世代多焦点IOL
国内承認済
- 屈折型 AMO社ReZoom(R) ―グレア、ハローの軽減
- 回折型 AMO社 Tecnis Multifocal
Alcon社 ReSTOR(R) ―コントラスト感度の改善
■ 新世代多焦点IOLの比較
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ReZoom(R)
(屈折型) |
TecnisMultifocal(R)*
(回折型) |
ReSTOR (R) **
(回折型) |
遠方裸眼視力 |
1.00 |
0.6以上100% |
0.7以上88% |
近方裸眼視力 |
0.46 |
0.4以上100% |
0.4以上100% |
近用眼鏡装用 |
50% |
0% |
7.5% |
グレア
ハロー |
確認されず
確認されず |
軽度17%
軽度22% |
軽中度26%
軽中度35% |
■ 新世代屈折型多焦点IOLの視機能の総括
屈折型 ReZoom(R)
- 遠方から中間は良好な視力。さらに瞳孔径が充分
確保されていれば、近方まで良好な見え方。
- グレア、ハローの問題も軽減。
- コントラスト感度も良好。
- 被写体深度が深く、乱視の影響も受けにくい。
- 近方視が瞳孔径依存。3mm程度以上の瞳孔径が要求されるので、高齢者では近方視が得難い。
回折型Tecnis Multifocal(R) ReSTOR (R)
- 瞳孔径に関係なく近方視力は良好。
- 以前より、コントラスト感度は改善。
- 相対的に中間の見にくさを訴える。
- 屈折型にはコントラスト感度は劣り、なんとなく 遠くが見にくい、字がうすく見えると訴える人も いる。 (waxy vision)
- 屈折型に比べ、乱視の影響を受けやすい。
■ 新世代多焦点IOLの適応例
屈折型 ReZoom(R)
瞳孔径依存なので、高齢者には不向き。 回折型に、近見は劣る傾向があるが、若年者で瞳孔径が大きければ意外と近見視力もよく、中間も見やすくコントラスト感度も良いのでよい適応
回折型 Tecnis Multifocal(R) ReSTOR (R)
瞳孔径に関係なく近方視力が得られるので高齢者でもよい。かえって遠近両用眼鏡に慣れている人の方が適応が早い。
■ 多焦点IOLに必要な瞳孔径
- 60歳以上では、屈折型多焦点IOLが機能するのは50%以下。
- 実際に充分に機能するには瞳孔径3.0mm程度必要であるとすると、50歳台後半以上では回折型多焦点IOLを選択する方が無難。
- 可能であれば、電子瞳孔計による瞳孔径測定が望ましい。
■ 多焦点IOLに注意すべき症例
完璧主義、神経質 近視
■ IOL挿入方法
通常、ReZoom(R)は アンフォルダーエメラルド、 Tecnis Multifocal (R)はアンフォルダーシルバー、ReSTOR(R)はモナークで挿入。
ウラワザ ReZoom(R)、 ReSTOR(R)はHOYA社インジェクターで挿入可能
多焦点IOLの目的・・・眼鏡への依存度を減少
■ 回折型多焦点IOL挿入眼での角膜乱視の影響
良好な裸眼視力を得るには術後角膜乱視が理想的には0.5D以内、多くとも1.0D以内であることが求められる。
それ以上の乱視では、術後の屈折誤差矯正が必要となることが予想される。
■ 屈折誤差を減少させるには
正確な眼軸長測定・・・IOLマスターの使用
術後の屈折誤差矯正・・・切開による乱視矯正
(Touch up) Limbal Relaxing Incision(LRI)
LASIKによる屈折誤差矯正
多くの症例が片眼のみのLASIKにて満足。
必ずしも、両眼のLASIKを行う必要はない。
同時に両眼の矯正をせず、患者の不満の大きい方の片眼のみを矯正して様子をみるのが良い。
屈折型
良好な遠方、中間視力
回折型に劣る近見視力
回折型
良好な近方視力
屈折型に劣る遠方視力
どちらも利点と欠点がある。
多焦点IOLの適応は、おおまかな傾向はあるものの最終的にはケースバイケースである。
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