コンタクトレンズについて
コンタクトレンズの消毒について
- 煮沸消毒:1970年代。最初に登場した消毒方法。消毒効果は細菌、真菌、アカントアメーバいずれにも有効である。ランニングコストは化学消毒に比べ安価であるが、現在発売させている頻回交換レンズの中には煮沸できない素材のレンズも多くみられる。また、レンズに熱を加えるため、付着した蛋白が熱変性し、アレルギーを発症することがある。
- 化学消毒:1991年に化学消毒が認可された。最初に登場したのが3%過酸化水素で、消毒効果は、グラム陽性菌,陰性菌に強い殺菌力を持つが,真菌,ウイルスに効果弱い。中和した後は水に変わるため、薬液アレルギーは生じない。中和を忘れると角結膜膜上皮障害を引き起こす。また、3%過酸化水素消毒剤は洗浄作用が無いため、別途レンズ洗浄、蛋白除去を行わなくてはならない。他にポピヨンヨードを用いた製品もある。グラム陽性菌,陰性菌、真菌に強い殺菌力を持つ一方、ヨードアレルギーに注意しなくてはならない。
- MPS(マルチパーパスソリューション):現在の化学消毒の主流である。簡便であるが、ワンボトルタイプの洗浄、消毒、保存を目的としているため、消毒と安全性を微妙なバランスの上で保っている製品群である。最近、シリコーンレンズと一部のMPS商品との相性が話題になっているが、レンズ素材が大幅に変化した場合は、このバランスが崩れる可能性がある。また、MPSによるアレルギーも指摘されている。主成分としてポリクアッド、PHMB(polyhexamethylenbiguanid )がある。99%が後者であり、眼に対する安全性が高く、広い抗菌効果を持つ。主成分の他に緩衝剤、等張化剤、防腐剤、表面活性剤が配合されている。
- MPDS(Multi-purpose disinfecting solution):ISO基準の第一水準をクリヤーした消毒剤。日本において多くのMPSは基準をクリヤーしていない。エピカゴールドとレニューマルチプラスのみである。MPDSでもこすり洗いは必要となる。なぜなら粘液ムチンが存在すると殺菌作用が著しく低下するため、コンタクトレンズ表面に付着したムチンを除去することが必要であるためである。
シリコーンハイドロジェルレンズについて
表面に親水処理を施したもの(PureVision、O2 optics、O2 optics2、Premioなど)と親水性ポリマーPVPの表面溶出により表面が親水化したもの(Acuvue Advance、Acuvue OASYSなど)に分類される。表面の親水処理の方法としてメタンプラズマ、酸素プラズマがある。メタンプラズマは脂質の付着抑制効果が得られるが、水濡れ性はやや劣り、表面にクラックが入りやすい。一方で酸素プラズマは水濡れ性の向上は高いが、表面劣化しやすいという欠点がある。また、表面処理レンズの方が親水基溶出レンズより表面に露出する親水基の面積が大きいため、接触角(水濡れ性)は優れている。親水基表面溶出レンズは表面に親油基も出現しているため、脂質汚れに弱いという欠点がある。
ハイドロジェルレンズは含水量が高い方が酸素透過性が高いのに対し、シリコーンハイドロジェルレンズはシリコーンが水よりも酸素を透すため、含水率が低い方が酸素を多く通すという特徴がある。シリコーンの含有量を増やせば酸素透過性が亢進するが、レンズの硬度が増すことによって生ずるSEAL(Superior Epithelial Arcuate Lesion)が問題となる。SEALとは硬い素材のレンズに発生しやすく、上眼瞼の圧迫によりレンズの最も厚い部位に発生する弓状の病変である。
コンタクトレンズの視機能シミュレーションについて
視力の質には近視や遠視、乱視、高次収差などの要因が関与している。コンタクトレンズの装用により角膜の本来持つ非球面性が崩れ、高次収差が増加する。球面レンズは非球面レンズ に比べて有効光学系は広いが、カーブの浅いレンズでは収差が多く出現する。非球面レンズは、カーブの浅い球面レンズの弱点(特に非点収差・湾曲収差)を補正するため、レンズ面がさまざまな曲率半径(球面の曲がり具合)の組み合わせで設計されており、レンズ周辺部の収差は少ない。
MFSCL(Multi-focal ソフトコンタクトレンズ)について
MFには回折型と屈折型があるが、SCLは屈折型が主流である。MFSCLには中心が近見用である、近見重視MFSCLと中心が遠見用である、遠見重視MFSCLがある。実際の臨床上でMFSCLの処方成功率は70%位である。また、短焦点レンズと比べ、遠見の質の低下は否めない。
高次収差を矯正し得るコンタクトレンズとは、ソフトコンタクトレンズの安定性(中心保持性)とハードコンタクトレンズの加工性を持ち備えたものである。現在様々なレンズを開発中である。 |