緑内障を早期発見し適切な治療を行うためには、緑内障性視神経障害の診断が必須である。
そこで今回は眼底読影のポイントについて説明していただいた。
眼底所見から緑内障を診断する方法として、大きく質的判定と量的判定がある。
質的判定では、まず視神経乳頭の大きさがポイントとなる。一般に乳頭の大きさに相関して陥凹は大きくなる傾向があるため、視神経乳頭陥凹が緑内障性か否かを診断する際には乳頭の大きさを念頭において判定する必要がある。判定方法として、乳頭耳側縁から黄斑部中心窩までの間に乳頭が何個並ぶかを見る方法がある。通常2個半位であるが、それより多ければ小乳頭、少なければ大乳頭ということになる。定量的にみる場合は、乳頭径(DD)と乳頭中心から中心窩までの距離(DM)の比(DM/DD比)をとる。通常2.4〜3.0とされており、それより大きれば小乳頭、小さければ大乳頭であるといえる。また乳頭の左右差を確認しておくことも大切である。
早期の緑内障では血管の屈曲点で陥凹外縁を判断することが重要になる。また乳頭陥凹の広がりを観察するうえでは、露出血管の存在(陥凹底やスロープ中に小血管が露出)・乳頭内血管の鼻側偏位・ラミナドットサイン(陥凹底を通して篩板孔が透見)が重要となる。
正常眼でリム(陥凹外縁と乳頭外縁との間)は下方(inferior)が最も厚く、次いで上方(superior)、鼻側(nasal)、耳側(temporal)の順であり、これをISNTの法則と呼んでいる。緑内障性変化を生じた乳頭では、陥凹の拡大は乳頭の上下方向どちらかにより強く生じ、縦長陥凹となる。これによりリムが菲薄化し、進行すると局所的な陥凹であるノッチング(切痕)が生じ、血管が乳頭縁で強く屈曲するようになる(bayoneting)。ノッチング部に一致して、網膜神経線維層欠損(NFLD)が観察されることが多く、最も早期に出現する緑内障性眼底変化の一つとして重要な所見である。
乳頭出血がある症例では視野障害の進行率が高いという報告があり(特に反復してみられた場合に進行しやすい)、乳頭出血の後にはNFLDが出現することが多いため、こまめな経過観察(一ヶ月半程度)が必要となってくる。また傍乳頭網脈絡膜萎縮(PPA)は緑内障眼では高頻度に観察されるため、緑内障を疑う一つの所見として重要である。
量的判定としては陥凹の最大垂直径と乳頭の最大垂直径との比である垂直C/D比でみる方法がある。緑内障ではISNTの法則でいうところの上下のリムが最初に障害されやすいことから、早期診断という意味では垂直C/D比をみることが重要である。さらに日本人では乳頭が同心円上にないことが多く、リムの幅を乳頭径で割るR/D比が有用であり、改定ガイドラインでも垂直C/D比、R/D比が採用されている。
緑内障診断のポイントとして、@乳頭陥凹の三次元的拡大、Aリムの狭小化によるノッチングの形成、Bリム消失部に一致してNFLD(+)、C乳頭出血の有無が挙げられる。
安易な診断をすることなく、早期診断・早期治療を考えていくことが大切である。
*緑内障の患者さんでは網膜血管閉塞症を合併する症例が多く、乳頭陥凹が大きい程その頻度も増加するとされている。よって網膜血管閉塞症を診た場合、緑内障がないかをチェックすることも大切である。 |