眼科で行うロービジョンケアは、視機能の低下によって生じる日常生活の困難に対して、
病院内の治療と平行して行われる。
ロービジョンケアを受ける人の主な眼疾患としては、加齢黄斑変性症、糖尿病網膜症、網膜色素変性症が挙げられるが、他にもさまざまな疾患の人がロービジョン外来を受診している。
実際のケア方法としては、1時間の外来枠をとり対応している。患者が抱えている問題等含め十分な聞き取りを行う。自己評価としてQOL評価を行いQOL評価表を作成する。実際の読み書き、歩行移動の観察を行い具体的な行動や状態の問題を明らかにする。これらを行うことにより、生活の中身の完成へと近づけていく。
主なニーズとして読書、移動、日常生活動作が挙げられるが、その中でも重大な困難として読書が挙げられる。読書評価について、読書速度と文字サイズの関係、読書チャート等で評価を行う。同じ視力でも読書速度は違う。臨界文字サイズとは最大読書速度で読める最小の文字サイズである。これらより補助具の拡大率を算出する。補助具の拡大率は、例えば本を読むとき、書くとき、黒板を見るとき、それぞれで異なるため、必要に応じた拡大率が得られる拡大鏡が必要となる。適切な補助具を選択してあげた後は、それを使えるようにトレーニングを行い、外来でフォローアップしていくことが必要である。
「ロービジョンの移動とその支持」杏林アイセンター 尾形真樹先生
ロービジョンの人の主な困難として、読書の次に挙げられるのが移動困難である。
一般的に、求心性視野障害では移動困難を生じ、中心暗点では生じにくいと言われているが一概にそうとは言えず、どこに視野が残っているかによる。
移動支持方法として、歩行訓練士による訓練を受けることが望ましい。具体的な補助具としては、白杖、盲導犬、Electronic travel aid(超音波によって障害物を感知する装置)、各種誘導システム、GPS等がある。例えば、白杖に対する抵抗を持っている人に対しては、それに関する知識を与えることが必要である。
移動を行う方法の一つに誘導歩行がある。誘導法にはさまざまな形があるが、注意点としては、物や壁にぶつけないこと、段差などでつまずかせない、転ばせないこと、また、具体的な指示を出すことが必要である。指示語として、「ここ」「そこ」といった言い方は避ける。
また、ロービジョンの人から「あの先生はだれですか?」といった質問が多い、まずは名前を伝えることが大切である。 |